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ヒカリゴケの栽培について

みなさま新年明けましておめでとうございます。本年も頑張って参りますので、応援よろしくお願いします。


さて、当方で何度か販売しているヒカリゴケに関して、栽培に関する問い合わせを結構いただくので、ここで解説します。


ヒカリゴケとはなんぞやというところからですが、簡単に言ってしまえばコケです(当たり前)。

まず前提として、ヒカリゴケについておさらいです。ご存知の方は読み飛ばしてしまってください。


分類は、以下の通り。蘚類の仲間です。


Schistostega pennata(Hedw.)F.Weber et D.Mohr

order: Dicranales

family: Schistostegaceae

genus: Schistostega

species: Schistostega pennata


ここでお気づきの方もいると思いますが、一科一属一種です。

非常に原始的で珍しいコケの一種です。

分布は北半球で、意外と広域分布です。国内では北海道と本州の中部地方以北に分布するようで、基本的に北方系のコケですね。

自生地は湿った陰地で、洞窟や岩の割れ目などにいます。光って見えるとはいえあまり目立たないので、もしかしたらもっと分布はあるかも。


さて、まずはこれは抑えて置きたいのですが、ヒカリゴケの光っている部分は原糸体と呼ばれるもの(胞子から発芽後に伸びる糸状の組織)です。配偶体と呼ばれる、いわゆる通常のコケ植物と聞いて思い浮かべる部位は光りません。

さらにいえば、光っている部分は原糸体に存在するレンズ状細胞と呼ばれるもの(小さな玉状の細胞)で、それが光を反射しています。ここには葉緑体が多く存在し、それで反射した光が緑色に見えるわけです。暗所で光合成して生き残るための術ですね。

↑ここに見える葉っぱのようなものが配偶体↑


配偶体(栄養体)の特徴ですが、葉は2列で栄養器官を持ちません。胞子体の画像はないですが、マッチ棒のような形をしており、葉は放射状につきます。


↑栽培環境、増えた分を移植したものです。販売時はこの状態です。↑


さて、ここからが本題、栽培に関してです。

以下、当方の栽培環境などを箇条書きで。


・温度は11〜23℃

・湿度は100%、密閉。

・光量は500lx程度

・用土はバーミキュライトとピートモスを適当に混合

・植え替えは容器いっぱいに広がってから。


まず気温について。ヒカリゴケは冷涼多湿を好みます。当方では冷蔵ケースを用いて夜間温度を11℃、昼間温度を23℃程度に調整しています。このくらいが最も調子が良く、ものすごい速度で増えていきます。一応25℃でも生育し、30℃でも生存を確認しています。


湿度に関してですが、このコケは大変デリケートですので、乾燥には強くありません。びちゃびちゃにならないよう注意しながら管理します。


光量に関しては意外とアバウトで大丈夫なようです。暗い環境で十分育ちます。明るすぎる環境は苦手なようですが、枯れてしまうほどではありませんでした。


用土に関してもアバウトで良いです。赤玉土やバーミキュライト、ピートモスなど、雑草などが生えにくい貧栄養な土壌が適しています。赤玉土はある程度粒を崩して使用していましたが、そうしなくても問題はなさそうです。栄養分の多い用土では他の種類のコケがコンタミすることがあり、押し負けてしまいます。そういった場合はとりあえず植え替えてしまいます。


植え替えに関しては、少しコツがいるかもしれません。糸状体がよく繁茂した箇所をカッターナイフなどで用土ごと切り取り、そっと移植します。移植した先で新しい用土との段差があると見た目が悪いですから、ヘラ付きピンセットなどで軽く押しつけるようにして落ち着かせます。最後に適当に霧吹きをして完了です。霧吹き後は水に濡れて糸状体が見えなくなってしまいますが、しばらくするとしっかり増えていきますので心配しないように。密閉後は霧吹きはほとんど不要ですが、1ヶ月に一回程度様子を見てあげましょう。


それと本種は環境変化で成長が止まりやすいように感じます。置き場を決めたらそこから動かさない方が良いでしょう。ただ変化に弱いといっても枯れてしまうほどではありません。

少なくとも当方で扱っている個体に関しては丈夫なものです。


↑光をよく反射している部位↑


こんな感じで栽培しているヒカリゴケですが、なかなか発光しませんでした。そんな中で発光させる条件のようなものをなんとなく掴めましたので、その経緯と条件をば。

しばらく栽培していたら偶然発光した箇所があり、詳しく調べていたらフォロワー様より”一定の角度から光が当たることが重要なのではないか”と指摘をいただき、その通りに覆いをしてみたところこれがビンゴ。

おそらくはレンズ状細胞が発達し、その中で葉緑体が光の入る方向に集合することで反射した光が緑色になり目に見えるようになるものと推測します(より詳しくご存知の方がいらっしゃいましたらコメント等でご教授ください)


ひとまずはこんな感じでまとめてみました。

ヒカリゴケに関してはまだまだわからないことも多く、例えば耐暑性だとか、コケリウム的な楽しみ方とか、色々と探ってみる予定です。

胞子で増やしたりもしてみたいですね。

自生地も見て勉強したいところです。


それではここらで失礼します。

良いヒカリゴケライフをお楽しみください!

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