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執筆者の写真大竹 洸希

ヒカゲノカズラの移植に関して

更新日:2021年10月17日

コロナウイルスも収束が見えない状況ですが、いかがお過ごしでしょうか。

外出自粛は解除されまして、植物を見に山を始め自生地探索を我慢できなかったわたしです。


本日は前回に引続き、ヒカゲノカズラ植物門はLycopodiumに焦点を当ててゆきます。


本種の移植は至難の技とされており、採取品の流通こそあれど増殖品の流通は無に等しいのではないでしょうか。

今回はそんなLycopodiumの採取から移植、増殖までの一連の作業に成功いたしましたので、こちらにて共有を図ろうと思います。


(予め明記しておきますが、私の手法は決して簡単ではありません。)



移植後に成育旺盛な屋久島産ミズスギ(Lycopodiella cerunuum YListより)


まずは採取、この段階から気を付けねばなりません。いわゆる単根体に該当する部位(Lycopodiaceaeに単根体は認められていないが、非常に形態が類似している)より下、根の部分をできるだけ多く付けた状態で採取せねばなりません。ただし、一部の岩の隙間や崖地のものを除けば多くは腐植質の土壌に根を張っている為、難しいことではありません。すこし慎重に採取してください。



自生するヒカゲノカズラ(Lycopodium clavatum) Alt. 1600m 嬬恋村, 群馬県


採取後、それが鬼門です。

まずは早急に水持ちの良い用土で植え付けを行ってください。

私はミズゴケを使用しています。

その後は密閉し、できるだけ涼しく、直射日光が当たらずかつ明るい場所で管理しています。



導入初期の京都府産ミズスギ(L. cerunuum)

管理は15〜25度、光は25WのLEDを35cmで照射しています。


ここでまずは3ヶ月〜半年程度様子を見てください。よく根を伸ばしてきますので、しっかり植え込み材に活着していることを確認してください。

そうしましたらいよいよ順化です。

まずは密閉環境から開放し、湿度の高い日陰などで栽培しましょう。

その後、成長が確認できればこっちのものです。

あとはお好きな環境で栽培可能です。


さて、最後は増殖です。

茎の途中から根を伸ばしますが、挿木はできないものと考えてください。

まずは伸びている茎の中で、根が良く張っている茎を見つけます。

根より株元側5cm程度の距離で切断し、根を素早く植え付け材で植え付けてください。

しばらく成長が鈍りますが、1、2ヶ月程度で再び成長を始めるはずです。



増殖した京都府産ミズスギ(L. cerunuum)


あとは乾燥させないよう管理するのみです。

すこし手間がかかる部分もありますが、現状私はこの方法で成功しています。

実績のある種はニイタカヒカゲノカズラ(L. veitchii)、マンネンスギ(L. dendroideum)、アスヒカズラ(L. complanatum)です。

今後はより手法を簡略化していく方向で試験していこうと考えております。


皆様が増殖株を販売し、山採り株の叩き売りが価値を失う時、私の勝利が訪れます。

今後とも当店を宜しくお願い致します。


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