テンナンショウの聖地、軽井沢で観察をしたテンナンショウに関して、いくらかご紹介を。
まずはヤマジノテンナンショウ(Arisaema solenochlamis)のご紹介を。
この4枚がヤマジノテンナンショウに該当するものです。
おおよそ共通する特徴として、仏炎苞舷部が急角度で垂れ下がる点です。また舷部の根元、ちょうど仏炎苞の頭頂部に該当する箇所がドーム状に膨らみます。こちらは一部例外もいますが、概ねほとんどの個体で舷部中央がやや窪む傾向にあります。
これらの特徴が個体群内で共通していれば、これとして良いでしょう。
画像1枚目は緑花個体で、個体群の中でもやや少ない印象を受けます。
画像2,3枚目は標準的な個体です。
画像4枚目は舷部があまり垂れない、少し例外的な個体です。
これだけ見ればヤマジノと同定するのは難しいように感じますが、①軽井沢の個体であること、②ヤマジノテンナンショう個体群内に存在したこと、を踏まえてヤマジノのいち個体と判断しました。
次はキタマムシグサ(A. peninsulae, A. boreale Type)です。
本種はコウライテンナンショウに非常に近縁なもので、その形態が連続的であるため、これを含めコウライテンナンショウ一種とする説(邑田 1995〜)があります。
またこれを亜種として区別する説(芹沢 1997)もあります。
ここでは基本的にコウライテンナンショウとし、その多型の一部としてキタマムシグサという個体群がある、という認識で進めていきます。
まずはコウライテンナンショウの特徴として、①花と葉がほぼ同時に展開する、②付属体はやや細い円柱状、③葉は二枚で葉軸が発達する、が挙げられます。
しかしこれらも種内でばらつきがあり、近畿から中国にかけて分布するコウライテンナンショウは仏炎苞が細長く紫色のものがあり、付属体が棍棒状であることがあります。
また九州にはカントウマムシグサと区別が非常に難しい個体群も存在し、今後の整理がまたれます。
さて、この中でもキタマムシグサに関してですが、基本的に関東地方より北に分布するものです。日本海側にはこれの紫色の個体群が複数存在します。
特徴として、仏炎苞舷部がやや伸び上がり、その根元がドーム状に膨らみます。またヤマジノテンナンショウに比べ白条が目立ち、印象としてそれらが透き通るような色彩をしています。
ここまでではなかなか区別するのも難しく感じますが、キタマムシグサは全体的に丸っこい雰囲気があり、慣れてくると概ね識別できるようになります。また軽井沢ではヤマジノテンナンショウと混生していることが多いです。
コウライテンナンショウ自体はまだカントウマムシグサとの区別ができていないものもあり、筆者も間違えることが多々あります。
ひとまずはこういった具合で2種の紹介です。
というのもこの2種しか見つけられておりません。
近日中に他のヤマザトマムシグサ、オオマムシグサ、カルイザワテンナンショウを探しに行ってまいります。
今回は画像を中心とした構成にしてみました。
やはり言葉での説明が難しいものもあり、手取り早く特徴を理解するには画像が良いものです。
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